周南ブロックからのお知らせ
*** 有吉病院 施設見学 報告 ***
9月19日(金) 福岡県若宮市にある有吉病院を参加者17名で見学に行きました。
◆施設概要
・昭和55年開設
・外来診療科目;内科・消化器内科・小児科・皮膚科・循環器内科・リハビリテーション科
・病床数;146床(医療療養型は56床、介護療養型は90床/全室個室・ユニットケア)
・関連施設; ケアハウス笠松苑・ グループホーム笠松の郷・有吉病院デイサービスセンター等
・介護病院棟平均介護度 4.63
・平成6年 褥瘡患者ゼロを掲げ、その約2年後、達成
・平成14年から介護療養型病床を個室化にし、ユニットケアの取組みを開始
(ユニットケアの取組みとして最初に行ったのがオムツ外しと離床)
今回は、午前中、約1時間、2つのグループに分かれて介護病床型病棟内と昼食時介助の様子を見学しました。午後は職員の方からの説明、質疑応答の懇談会を約2時間行いました。
◆印象に残った点
①職員は制服でなく私服であること。利点として、
1)入所者と職員のカベをなくし、入所者に親しみをもってもらう。
2)職域のカベをなくすメリットがあり、組織上も介護職も看護職もケア部に所属でフラットな組織編成にしてある。
②業務の様子(懇談会の説明から)
1)引継は、24Hシートに変更点を附せんに記載して貼って実施していること
その時の変更・留意点だけでなく、ユニットケアの根拠となる24Hシートを常に見て業務をしていること。(シートは附せんが多くなったら新たに作成される)
2)引継時、施設の理念を声に出して話すこと(職員によっては自分の言葉に変換して話すことがある)
常にユニットケアの原点を意識することができ、介護業務に忙殺されても、仕事がぶれない。
3)施設内認定試験制度
職員は全員どれかの委員会に所属する。様々な委員会があるがその中の、ケアの達人委員会主催の施設内認定試験があり、合格すると自分の名札や施設内の自分の掲示物にそれを表示できる。
③食事は最後まで口から摂り、楽しく安全に!(他職種間でも共通の認識をもつ)
『食事は最後まで口から摂り、楽しく安全に!』をモットーにして、御飯やおかずの香り、食器を準備する時の音等、これらの五感を刺激する演出を大事にし、御飯は、ユニットで炊く。おかずは、調理室で作り、配膳車で各ユニットに配られるが、配膳車を運んできた調理の職員もユニットでおかずの取り分けを手伝い入所者の食欲を増し、楽しい雰囲気を出す。
④個性的な住空間
介護療養型病床90床の内訳は3階建ての新築60床(各階2ユニット、20床)と既存の建物で多床室を個室に改装した3階建て30床の2棟からなる。
2棟とも、小物等で室内環境に変化をつけてあるが、特に建築家 外山 義(とやま ただし)氏の設計した新築は内装仕上げに木質を多用し温かみのある住空間となってある。
◆新築の特徴
1)暗い照明
高齢者の目に優しいようにあえて、照度を落として暗い照明としてある。
2)変化のある平面プラン
廊下を直線とせず、凹凸をつけ、入所者が身を隠せるような空間を設ける(入所者にとっては、他人から見られないから安心できる空間。)廊下の至る所に木製の椅子が設置され、どこでもすぐ、入所者が休憩できる。
3)シンボルツリー
構造的に取り除くことができない重要な鉄骨柱が廊下の職員詰所前にあるが、この柱の仕上げに丸太をくり抜いた木皮で覆い、建物のシンボルとして活用してある。太い丸太があることによって、木のぬくもりのある温かみのある室内空間となっている。このシンボルツリーは各階で異なる仕上げとなっている。
4)お尋ね所
職員詰所は「お尋ね所」と表札をつけ、入所者が気軽に相談に来れるようにしてある。
5)個室の表札
入所者の家族とその入所者の担当職員等で制作するのでどれも個性的である。設置高さが低いので入所者にわかりやすい。また、表札の横に担当職員の名前も掲示してあり、担当職員の責任と誇りを引き出せるようにしてある。
最後に、職員が落ち着いて入所者の介助を行い、どの入所者も穏やかで過ごされていた様子を観察して、改めて、介護は、施設であっても、日常生活の場での支援であり、一人ひとりの思いを尊重し実践できるように努力しなければならないことを痛感しました。
御多忙な中、丁寧に対応して下さった有吉病院の職員の方々、そして、他県までの長時間安全運転して下さった運転手の方、一緒に楽しく学ぶことができた参加者の皆様この場を借りて厚く御礼申し上げます。